宇部協立病院糖尿病臨床研修カリキュラム
日本糖尿病学会研修指導医
上野八重子(認定番号1370)
研修カリキュラムについて
・研修対象
・目標
・目標項目
・研修計画
・到達目標に対する評価
<研修対象>
当院は159床の中規模病院であるが、20年以上にわたり内科初期研修を行ってきた実績があり、現在は管理型の臨床研修指定病院となっている。すでに内科認定医を取得した医師や内科認定医受験資格を有する医師が、糖尿病専門研修を希望した場合に、当院での研修をスタートするものとする。糖尿病研修は3年以上の期間にわたるものとし、研修を受ける者は医師として社会人としての人格および見識を備えている者であること、研修開始時に日本糖尿病学会の会員であるか又は新たに会員になることを条件とする。
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<目標>
日本糖尿病学会専門医制度規則第1章第1条にのべられているように、この制度は“糖尿病学の進歩に呼応して糖尿病臨床の健全な発展普及を促し、有能な糖尿病臨床医の養成を図り、国民の健康増進に貢献すること”が目的である。この条文を満足するべく、日本糖尿病学会研修指導医は日本糖尿病学会認定教育施設の到達目標項目を研修期間中、研修可能になるようにカリキュラムを制定している。
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<目標項目>
(1) 診断
1、糖尿病の診断基準および病型分類に関する学会勧告の内容を理解し臨床応用ができる。
2、 糖尿病に必要な検査を実習し、自分でできるようになる。
3、 重症度(境界型からケトアシドーシス、昏睡)の診断ができる。
4、 合併症の有無、ある場合はその進行度の診断が自分でできる。
(2) 治療
1、患者個々人に適した治療目標の設定ができる。
2、食事療法の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
3、運動療法の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
4、経口血糖降下薬の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
5、 インスリン療法(1型、2型、その他に区別して)の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
6、 合併症を伴う糖尿病の治療の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
7、 糖尿病前昏睡〜昏睡患者の治療の理論と実際の知識を習得、実施しその効果が評価できる。
8、 糖尿病妊婦の管理を習得、実施しその効果が評価できる。
9、 低血糖に関する理論と正しい知識と対応を体得する。
(3) 患者指導・教育
1、個人・集団指導を体験し、カリキュラムを作り、実施、評価できる。
2、食品交換表の利用方法の指導、運動処方の作成、インスリン自己注射および自己血糖測定の指導ができる。
3、日本糖尿病協会が主催する教育活動などに参加し、それらの
意義を理解する。
4、患者指導チームのあり方、質の向上方法についてのカンファランス参加を通じて正しい認識を持つ。
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<研修計画>
当院は約500名の糖尿病患者を管理しており、インスリン療法は約120名に施行されている。外来では初心者への糖尿病教室とあわせて患者会での集団指導や行事の工夫を体験できる。教育入院では主に個別型の教育コース(3泊4日、7日、14日)となっており、患者を受け持つと同時に小グループ向けの講義を研修医にも体験してもらう。院内の整形外科専門医や救急専門医との連携で、糖尿病性壊疽・重症感染症・高血糖昏睡(人工呼吸を含む)などの急性合併症を担当できる機会も多く、糖尿病患者の全身管理について深く学べる。外科や整形外科の術前術後の血糖コントロール方法についても担当できる。リウマチ学会認定教育施設になっており、ステロイド糖尿病の血糖コントロールを行う機会も多い。救急病院であり、糖尿病に伴う脳血管障害や急性心筋梗塞の初期治療に関わる機会は多い。また眼合併症については開業専門医と連携し硝子体出血については山口大学病院に紹介しているため、院内での眼底検査実施による学習と他院での見学を通じて網膜症の診断・治療についてのエッセンスを学べる。透析施設も市内に4箇所あり、情報交換を行いながら透析導入までの末期腎不全の治療について実践的に学べる。
(1)1年目
病棟での研修と外来での研修を行うが、内科の経験年数を勘案し経験年数が長い医師は外来での研修もスタートする。教育入院後のフォローを比較的早い時期から経験してもらう。入院では教育入院患者および治療入院の糖尿病患者を研修指導医とともに受け持ってもらい、糖尿病の病態・病型を的確に把握する為の検査計画や合併症についての種々の検査やその評価について正しい知識を身につけてもらう。コメディカルとも連携して食品交換表・運動療法についての基礎知識を身につけ患者に正しい指導が行えるようにする。また、患者の心のケアについても学び早期より患者から信頼される専門医になれるよう、コミュニケーション能力の育成にも努める。入院は年間50症例を目標とする。
(2)2年目
糖尿病専門外来を週1回以上研修指導医のもとで担当する。入院で受け持った患者の外来フォローを行い新患の診察は指導医のチェックのもとで担当、治療方針については指導医と相談して肥満度や合併疾患を配慮した糖尿病薬物治療の原則について実践的に学習する。当院で行っている眼底写真について糖尿病専門医レベルでの結果判定ができるように指導医のもとで研修し、眼科への適切な紹介ができる能力を身につける。糖尿病妊婦・小児糖尿病については、大学病院の臨床登録医制度や他院への見学制度などを利用して自分で治療ができる実践的な知識を身につける。腎症や腎不全の患者を受け持ち、食事療法指導や透析導入時の患者への適切な説明等についての知識を身につけ、腎臓専門医とのスムーズな連携を行えるように透析の基本的事項を学ぶ。年間50症例を目標とする。
(3)3年目
糖尿病外来を週2回程度、内科の経験年数が長ければ関連クリニックの一般および糖尿病外来を指導医の指導のもとに週1回担当する。プライマリーな診療機関での軽症糖尿病を含めた管理を実践的に学ぶと共に、健診の結果返しなども行いながらメタボリック症候群の診断・診療技術も高め生活習慣病への深い洞察力を身につける。コメディカルと連携して外来でのインスリン導入なども経験する。より的確な糖尿病診療を行うため内科一般の診療能力をも高め、糖尿病合併症以外の他疾患を併発した際にも、適切な対応ができるように基本領域の学習をあわせて行う。外科や整形外科からの術前術後の併診依頼を受け全身的な周術期合併症が防止できる安全かつ厳密な血糖管理について学ぶ。他院との連携により糖尿病妊婦の治療を指導医のもとで経験する。年間50症例を目標とする。
(4) 糖尿病患者指導、教育
新患向けの糖尿病教室はほぼ1ヶ月に1回行なっており、糖尿病食の試食・栄養士の講義・医師による全般的な講義・看護師による日常生活指導より構成されている。教育入院は随時入院で、患者に合わせた個別指導コースとなっており、骨折など他疾患で入院した患者等も随時に教育コースに導入可能であり、糖尿病担当医(指導医および研修医)は患者の病状に合わせた指導内容のコーディネイトや動機付けおよび病状説明を行い、小グループ対象の集団指導も行なう。患者は糖尿病療養指導士を含む看護師、栄養士、薬剤師による指導を受けるが、研修医はコメディカルスタッフとのカンファレンスにより患者についてより広く情報を集め、生活背景を含めた多角的な視点で患者を捉え最も適切な治療方針を決定していく手法を学ぶ。当院には23年前に設立された患者会があり日本糖尿病協会に加盟し活動しており、その行事への参加や山口県支部が主催する行事および小児糖尿病サマーキャンプなどに参加して糖尿病における協会活動の重要性について認識を深める。
以上のような3年間の研修により、糖尿病学会認定施設での研修目標項目は到達できるようにする。
(5) 業績目標
糖尿病臨床についての筆頭者としての学会発表または論文発表を2編以上行うこと
を目標とし、1型糖尿病を5例以上、2型糖尿病を80例以上、妊婦を1例以上経験し、
それらの診療録を保存する。
(6) 勉強会
糖尿病教育入院カンファランスと糖尿病グループでの学習会・抄読会。内外の講演会への参加とともに症例発表や学会発表は積極的に行っていく。臨床のみならず基礎も含めて“糖尿病学”を常に学び、その進歩に応じた新しい知識を獲得していく。
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<到達目標に対する評価>
研修期間内の目標は到達項目であるところの1〜4、治療の1〜9、患者指導・教育の1〜4を3年間にわたり十分習得させ、実施後の成績が研修医および指導医とも満足すべきものであれば評価されるものである。前提として研修医の評価と指導医の評価が一致する事は当然である。
研修評価は、研修医と教育担当医が一次評価を行い、それに基づき指導医がニ次評価を行うものとする。
当院は今年で開設30周年を迎えるが歴史は近隣の病院に比べてやや新しいといえる。その中で患者会を作ってその活動を継続し毎年の糖尿病週間行事にも積極的に取り組み、学術的には民医連スタディという前向き研究に実践的に関与した。また2004年には“全国民医連糖尿病シンポジウム”を主催し、病院全体として糖尿病の診療レベルアップに努めてきた。当院は医療生協であり同じ法人内には二つの関連クリニックがある。そこにも約200名の糖尿病患者が管理されており、フットケアなどを含めた療養指導と多数のインスリン療法がなされている。外来から入院まで一貫して診ることが可能な中規模病院における糖尿病診療の特性を生かして、充実した専門研修ができるよう配慮し、また地域との連携も積極的に行なっていきたい。
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